竹本健治 用語辞典




用語
解説
アンチ・ミステリ 反推理小説。中井英夫が、塔晶夫名義で発表した『虚無へ
の供物』をアンチ・ミステリと名づけたことに由来する。
「…(前略)…コロネーション・ブルースの愛娘、母方に遠くア
ズマホープの血を引くこのローラ嬢を引き連れながら私の
考え続けていたのは、アンチ・ミステリー、反推理小説という
ことであった。」(塔晶夫著『虚無への供物』講談社・本扉記
載の前書きより)
中井によると、その起源は小栗虫太郎の『黒死館殺人事
件』、夢野久作『ドグラ・マグラ』に遡ることができる。そして、
中井英夫の『虚無への供物』の後継が、竹本健治の『匣の
中の失楽』である。
アンチ・ミステリの特色は、
(1)先行するミステリに対するメタ・レベルでの言及が見ら
れ、ミステリの綜合を図る意図がみられること
(2)人間の狂気や疎外など、マージナルな領域に対する知
的関心がみられ、そのために精神医学・オカルティズム・民
俗学・異端科学などの研究成果が動員される傾向がある
(3)エドガー・アラン・ポーを起源とする象徴言語・詩的言語
による世界構築がみられるなどの特色がみられる。ポーの
文学については、『悪の華』で知られるフランスの詩人ボー
ドレールが評価を与えたことが思い起こされる。[文責:T.Ha
rada@001]
アンチ・ミステリ(補足) 作者がついにそれに類するもの、或いはそれを超えるもの
を書き得なかったという意味での『唯一の大作』[文責:よたろ
う@002]
四大ミステリ 小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、夢野久作『ドグラ・マグ
ラ』、中井英夫の『虚無への供物』、竹本健治の『匣の中の
失楽』の4つを指す。
ちなみに、三大ミステリは、小栗虫太郎の『黒死館殺人事
件』、夢野久作『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供
物』の3つを指す。[文責:T.Harada@001]
メタ・ミステリ 超推理小説。先行するミステリに対する言及が見られる作
品をいう。
竹本健治の『ウロボロスの偽書』・『ウロボロスの基礎論』・
『ウロボロスの純正音律』は、典型的なメタ・ミステリである。
ミステリの場合、「意外な犯人」・「意外なトリック」が重んじら
れるため、先行するミステリが使用しなかった内容が望まし
い。そのため、古くは江戸川乱歩の『続・幻影城』・『類別トリ
ック集成』などの研究がなされてきたし、今日の実作者にし
ても、公言しないまでも、先行するミステリの研究を続けて
いる。つまり、ミステリにメタ・フィクション化の傾向が見られ
るのは、必然的といえる。[文責:T.Harada@001]
メタ・フィクション 自己言及的な文学の特質は、ミステリに限定されるもので
はない。
例えば、フランス文学でいえば、サルトルの『嘔吐』(フラン
ス語を直訳すると「吐き気」となる)は、主人公のロカンタン
が、ある小説を書く決心をするところで終わっており、それ
が『嘔吐』自体であるという自己言及的な構造を持ってい
た。
アメリカ文学でいえば、ドナルド・バーセルミの『雪白姫』、ト
マス・ピンチョンの『重力の虹』、ジョン・バースの『フローティ
ング・オペラ』といった作品が、メタ・フィクションの性格を持
った文学空間を生み出している。[文責:T.Harada@001]
新本格(派) 綾辻行人が1987年に発表した『十角館の殺人』以降の
「謎−解明」を物語の中心に据えた作品を指す。特に、講
談社ノベルス系で輩出したミステリの一群を指すことが多
い。
新本格派は、江戸川乱歩・横溝正史らの本格派の復興運
動とみなすことができ、その反対語は社会派である。
新本格派は、反リアリズムの姿勢を持つことが多いことか
ら、新本格派に一定の評価があたえられるまでは、「人間
が描かれていない」との批判があった。現在では、そのよう
な批判には「あなたの考える人間とはなにか」と斬り返すこ
とが可能だろう。[文責:T.Harada@001]
第3の波 笠井潔の批評でみられる「新本格派」に相当する術語。
「新本格派」を第3の波に位置づけることで、島田荘司・竹
本健治・笠井潔ら新本格派以前から本格ミステリを書いて
きた作家軍を、2.5波と位置づけることができる。
アンチ・ミステリの誕生には、ミステリ・ムーブメンツの集積
があり、その集積がブラックホール化しなければならない、
と説く。
笠井の判断では、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、夢野
久作『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』以降
に、アンチ・ミステリは誕生していないとされる。
なお、『ウロボロスの純正音律』では、第3のウロボロスと自
称する笠井潔の『天啓の器』を、2.5波と看做すというギャグ
が炸裂している。[文責:T.Harada@001]
社会派 松本清張の『点と線』以降の(社会主義的)リアリズムに立
脚するミステリーを指す。海外では、クロフツの『樽』が、聞
き込みを主として、足で犯人を追い詰める凡庸な警官を主
人公に据えたことから、この動きが始まっていた。
作品の主題として、社会の矛盾や組織悪の告発、金銭欲
や愛欲にまみれた人間関係の解明が置かれることが多く、
扱われるトリックとしては時刻表を酷使したアリバイ・トリック
が圧倒的に多い。
その後、社会派サイドから本格的トリックを取り入れる試み
(森村誠一ら)がみられ、逆に本格派サイドから社会派的主
題や時刻表トリックを導入する試み(島田荘司ら)がみられ
た。
社会派は、現在トラベルミステリーや、冒険小説へと裾野を
広げている。[文責:T.Harada@001]
ミステリ/ミステリー 明確な区別はないが、新本格派サイドでは「ミステリ」、社会
派サイドでは「ミステリー」を使うことが多いようである。[文
責:T.Harada@001]
黒い水脈 埴谷雄高の用語であり、中井英夫の『虚無への供物』など
の「アンチ・ミステリ」を、澁澤龍彦・種村季弘らの異端文学
の流れのなかに位置づけ、闇の精神史として捉えなおそう
とする概念である。[文責:T.Harada@001/修正:久世樹@006]
初期ゲーム三部作 竹本健治の牧場智久シリーズのうち、『囲碁殺人事件』、
『将棋殺人事件』、『トランプ殺人事件』を指す。
なお、ゲーム殺人事件シリーズとしては、他に短編「チェス
殺人事件」がある。
綾辻行人対談集『セッション』によると、綾辻行人+竹本健
治合作によるゲーム殺人事件シリーズ(長編)第四弾『麻雀
殺人事件』が話に上ったこともあるそうで、最初の謎も決め
てあるそうである。[文責:T.Harada@001]
佐伯千尋シリーズ 『閉じ箱』に収録された短編「実験」・「闇に用いる力学」・「跫
音」・「仮面たち、踊れ」、『フォアフォーズの素数』に収録さ
れた「震えて眠れ」「空白の形」「非時の香の木の実」、長編
『ウロボロスの偽書』を指す。
当初、長編『闇に用いる力学』のために造形された佐伯千
尋というキャラクターは、読者を被虐に満ちたエロティシズ
ムの空間に誘惑する人物として描かれている。[文責:T.Har
ada@001/加筆:久世樹@006]
『蛇のアポクリファ』 『兇殺のミッシング・リング』に出てくる「メタ・ロマン派の代表
作」とされる作品。日下三蔵氏は、『魔の四面体の悪霊』
(ハルキ文庫)解説で、『ウロボロスの偽書』を指すという説
を提出している。[文責:T.Harada@001]
『9』 『兇殺のミッシング・リング』に出てくる『蛇のアポクリファ』の
作者による「三部作」の作品。日下三蔵氏は、上述の文庫
解説で、『クー』シリーズを指すという説を述べている。[文
責:T.Harada@001]
二人称小説 「あなた」を主人公とする小説。これにより、読者自身が主
人公となり、物語のなかに入り込むことになる。
フランスの作家ミッシェル・ビュトール(アンチ・ロマン、ヌー
ヴォー・ロマンに分類される作家)の『心変わり』によって始
められ、日本では倉橋由美子(反世界小説と称する独自の
観念小説を発表)が『暗い旅』で実作を試みた。
竹本健治の『カケスはカケスの森』は、ミステリにおける二
人称小説の試みである。[文責:T.Harada@001]
タイポグラフィー 竹本健治の作品では、主人公の深層心理の表現のため
に、タイポグラフィーを利用した言語表現を行っている。
タイポグラフィーによる言語表現の実験としては、フランス
の詩人ギョーム・アポリネールの『カリグラム』が有名であ
り、その後、タダ・シュルレアリスム系統の文学において、実
作が数多くなされている。
竹本作品におけるタイポグラフィーによる表現は、主体の解
体、自我崩壊と密接に結びついているという特色がある。
[文責:T.Harada@001]
『天啓』シリーズ 笠井潔による『天啓の宴』、『天啓の器』、『天啓の虚』三部
作を指す。これらの作品を貫く観念は、大文字の作者の死
であり、この点から竹本健治の『ウロボロス』シリーズを批
判している。[文責:T.Harada@001]
スキゾ/パラノ ニュー・アカズミズム(ポスト構造主義を、日本の批評に導
入)の浅田彰が、『逃走論〜スキゾ・キッズの冒険』で提出し
た概念であり、それぞれスキゾフレニーとパラノイアの短縮
形となっている。
浅田彰は、前著『構造と力』において、笠井潔の思想的基
盤であるジョルジュ・バタイユの思想を、「構造とその外部の
弁証法」であるとして、ポスト構造主義の立場からバッサリ
斬り捨てた。バタイユの『呪われた部分』では、超コード化社
会(専制君主制社会)の分析は可能でも、制限された脱コ
ード化社会(資本主義社会)の分析は不可能であり、資本
主義社会から、さらに外部に向けて逃走線を引くことはでき
ないというのである。
浅田彰のスキゾ/パラノ図式を導入すると、笠井潔は、全
共闘の負け組でパラノということになることから、笠井潔は
『<戯れ>という制度』を書き、そのなかに収録された「浅
田彰という装置」で、浅田ブーム(AA現象)を「ジャパン・ア
ズ・NO.1」のあらわれであると皮相な見方を示した。ただ
し、この反論は相手にされることなく黙殺され、このときの屈
辱とルサンチマンが尾を引くことになる。
『天啓』シリーズにおける竹本バッシングは、かつての脱構
築を唱えるニュー・アカデミズムの幻影を見ていることに由
来する。今日、ミステリでは構築なき脱コード化の傾向が見
られるが、その元凶が『ウロボロス』にあるというのである。
竹本健治の『ウロボロスの基礎論』では、笠井からの批判
を意識して、竹本=スキゾ、笠井=パラノという図式が持ち
出されている。[文責:T.Harada@001]
『ウロボロスの摂動論』 『ウロボロス』VS『天啓』の対立図式を踏まえて、黒樹龍思
という匿名の著者が『天啓の骸』という『天啓』シリーズの偽
書を、竹本系創作掲示板「破壊者の幻想譜」に書いた。
黒樹龍思とは、かつて笠井潔がマルクス主義活動家であっ
たころに使用していたペンネーム「黒木龍思」のもじりであ
る。
この作品が契機となり、へぬへぬという謎の人物が『ウロボ
ロスの摂動論』を「破壊者の幻想譜」に投稿するようになっ
た。へぬへぬとは、竹本健治のハンドルネーム「へのへの」
のもじりである。
この作品は、メタ・ミステリ(『ウロボロスの偽書』、『ウロボロ
スの基礎論』、『天啓』シリーズとその偽書)に対するメタ・ミ
ステリであり、メタ・メタ・ミステリである。
2003年(平成15年)10月3日〜11月4日の間、『ウロボロス
の摂動論』のPDFファイルが、期間限定でホームページ
からダウンロードできるようになっていたが、現在は公開さ
れていない。
なお、2004年9月10日に、よたろう@002氏が、「破壊者の幻
想譜」にて、へぬへぬが共同執筆者チーム名であり、自分
がそのメンバーであることを明かしている。[文責:T.Harada
@001]
『悪を呼ぶ少年』 トマス・トライオンの小説。『匣の中の失楽』に登場するナイ
ルズとホランドの名前は、この小説に登場する双子の名前
を借用している。
1972年に映画化されており、第5回シトヘス恐怖(スペイン)
映画祭金賞受賞を受賞している。製作総指揮・脚本はトマ
ス・トライオン、監督・製作は「おもいでの夏」のロバート・L・
サーティーズ。
なお、作家トマス・トライオンは、「栄光の野郎ども」などに出
演した俳優トム・トライオンと同一人物である。[文責:T.Hara
da@001]
ガタリの『悪魔のコンベンション』 『兇殺のミッシング・リング〜銀河スナイパー/パーミリオン
のネコ3』(徳間ノベルスMio)の「あとがき」(P252)で挙げ
られている書名。
後に、このような本は実在しないことを、竹本健治自ら明ら
かにしている(少年回廊BBSにて)。
竹本健治の場合、「あとがき」に至ってもフィクションが続い
ていることが多々ある。額縁自体も虚構となることで、虚構
と現実の境界が曖昧なものになってゆく。[文責:T.Harada@
001]
『目羅博士の不思議な犯罪』 江戸川乱歩の短編。竹本健治の「月の下の鏡のような犯
罪」(『閉じ箱』に収録。なお、ちくま文庫版日下三蔵編『乱歩
の幻影』にも収録されている。)は、乱歩の「目羅博士の不
思議な犯罪」の続編として書かれている。なお、中井英夫も
また「乱歩の長編では『孤島の鬼』、短編では『目羅博士の
不思議な犯罪』をもっとも愛し、最高作として疑わない」と書
いている(昭和54年講談社版江戸川乱歩全集第六巻解説
「銀と金」、創元ライブラリ版中井英夫全集第七巻『香りの
時間』に収録)。[文責:T.Harada@001]
夢野久作 『ドグラマグラ』の著者。竹本健治に影響を与えた作家のひ
とり。主要著作は『日本探偵小説全集4夢野久作集』(創元
推理文庫)や角川文庫で読める。またちくま文庫版全集が
刊行されている。参考図書として東雅夫編『ドグラマグラ幻
戯』(学研M文庫)および鶴見俊輔著『夢野久作 迷宮の住
人』(双葉文庫)(解説:中沢新一)がある。[文責:T.Harada@
001]
中井英夫 『虚無への供物』の著者。竹本健治に影響を与えた作家の
ひとり。講談社文庫から『新装版 虚無への供物(上・下)』
(カバー写真:森山大道)が刊行されている。新装版が刊行
された際に、上巻(発行年月日:2004/04/15、サイズ:A6
判、ページ数:420、ISBN:4-06-273995-X、定価(税込):
730円)には、京極夏彦による帯文(「終わることで始まる呪
縛は、今も持続している。」)が、下巻(発行年月日:2004/04
/15、サイズ:A6判、ページ数:475、ISBN:4-06-273996-
8、定価(税込):730円)には、綾辻行人による帯文(「陶酔と
震撼の果てに―――読む者は皆、『虚無』の虜囚(りょしゅ
う)となる。」)が付けられた。ちなみに、講談社文庫版<旧
装版>は、装画:大島哲以、発行年月日:1974/03/15、サ
イズ:A6判、ページ数:660、ISBN:4-06-136004-3、定価
(税込):980円)であった。創元ライブラリ版中井英夫全集
[1](初版:1996年11月28日、ページ数:760P、ISBN:4-488-
07011-6、Cコード:C0193、税込1,785円(本体価格1,700
円))は、塔晶夫名義で講談社から刊行された初期ヴァージ
ョンに基づいている。なお、『虚無への供物』の初出連載誌
は、「アドニス」であった。中井英夫の主要著作は、創元ライ
ブラリ版中井英夫全集に収録されている。[文責:T.Harada@
001]
<狂気三部作> 『狂い壁 狂い窓』(角川文庫)あとがきで、竹本健治は次の
ように書いている。「とりわけ当時、個の狂気に最も興味が
傾いていたこともあって、『将棋殺人事件』『トランプ殺人事
件』とともに<狂気三部作>と言えるものになっていると思
う。」(P337)[文責:T.Harada@001]
依田紀基九段 少年回廊BBS2004/11/09(Tue) 03:17になされた竹本健治
による投稿[1157]によると、依田紀基9段が14歳で囲碁
界に入段したときからのファンで、竹本作品の探偵役・牧場
智久のモデルであるとのこと。[文責:T.Harada@001]
『偶という名の惨劇』 『匣の中の失楽』(幻影城)の次に刊行が予定されていた作
品。幻影城が潰れたため、原稿はお蔵入りになった幻の作
品。推敲を経て、いずれ刊行されるのだろうか?なお、『偶
という名の惨劇』は、『匣の中の失楽』の続編ではない。[文
責:T.Harada@001]
『摂動』 『連星ルギイの胆汁』を書いていた時期に、平行して書かれ
ていた作品。e-NoVELSでの『連星ルギイの胆汁』の「作者
の言葉」によると、相当変な話であるらしい。現在のところ、
未完成の中絶作である。『腐蝕』『連星ルギイの胆汁』の続
編ではないので注意。[文責:T.Harada@001]
『黙示のクー』 『クー』『鏡面のクー』に続く続編として予定されている作品。
現在のところ、未刊。[文責:T.Harada@001]
『マジカル頭脳パワー!!』 テレビ番組『マジカル頭脳パワー!!』のワンコーナー「マ
ジカルミステリー劇場」のトリック制作ブレーンに田奈純一・
新保博久・我孫子武丸の各氏とともに、竹本健治も参加し
ていたことがある。[文責:T.Harada@001]
以下、随時増補予定






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